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2010年9月12日日曜日

心と体はぐくむ中学校給食の実現を

日本共産党神戸市議団が実施求める

日本共産党神戸市会議員団の「子育てアンケート」で、中学校給食の実施を求める声が強いことが、改めて明らかになりました。四十代以下の回答者では七割が中学校給食を求めています。しかし、神戸市は従来の「愛情弁当論」に固執したまま。貧困が広がる中、お昼ご飯を食べずに過ごす中学生も出ています。中学時代は、肉体的にも精神的にも大きく成長する時期。中学校での完全給食実施は喫緊の課題といえます。

全国3/4の中学校で完全給食

完全給食は、全国的には四分の三の中学校で実施されています。実施が遅れている兵庫県内でもすでに半数を超える中学校で実施されており(表参照)、ミルク給食に留まる神戸市は少数派です。

子育てアンケートには「愛情弁当論はいかがなものか」と、神戸市の市政を痛烈に批判する声も寄せられています。

弁当販売も高価がネックで利用1.2%

神戸市は、「昼食対策」として各学校で弁当の販売を行っています。二〇〇三年一月から五校で始まりました。神戸市の「愛情弁当論」にたいする批判が強まる中での実施でした。

「弁当販売」に先立ち、神戸市教育委員会はアンケートを実施。その結果、自宅から弁当を持って来られない子どもが10%以上いる学校が十数校あることがわかりました。

弁当販売は、市内に八十三校ある中学校の内、八月末現在で七十五校で実施されています。
しかし、昨年度の利用率は1.2%にとどまっています。四百円~四百五十円という高価格がネックとなっています。教育委員会も利用率の低さの原因として「価格が高い」「弁当を注文するのは恥ずかしい」などの声があることを認めています。

教育の一環と位置づけた給食を

教育委員会は、「小学校で給食が栄養を摂取出来る唯一の食事、と言う子どもがいた」ことを認めながらも、中学校給食ではなく「他の施策の活用を考えたい。一部の子どものために給食実施のための莫大な予算を付けるのは難しい」との態度です。

日本共産党議員団は一貫して、教育の一環と位置づけられている「学校給食」として、中学校でも完全給食を実施するよう求めてきました。

弁当販売についても「弁当販売は、業者と生徒だけの関係で成り立つもので、制度としての給食ではない」「弁当の内容について、栄養面などについて、業者に指導できる立場にない」と批判。心身の健康に大きく関わる問題として、健康教育の観点からも、栄養のバランスに配慮した食事ができる完全給食の実施を求めています。

また、完全給食実施までの対応策として、弁当販売も「少なくとも学校給食法にもとづく給食として実施すべき」と求めています。

こうした議員団の質疑を通して、教育委員会の管理栄養士が業者の調理場へ出向いての指導や、業者への補助金、配膳室の整備などが実現しています。

市予算の1/1000で実現できる

神戸市は、中学校給食を実施しない理由として「給食となると、最も経費の少ないデリバリー方式で、配膳室の整備など初期投資で十二億円、毎年の運営費で十億円の財政負担となる。財政が厳しい中では困難」などと、財政難をあげています。

しかし、神戸市の会計規模は年一兆八千億円(全会計合計)。中学校完全給食を実施しても毎年の運営費はその千分の一にもなりません。未来の日本、神戸を担う中学生の健全な成長を考えれば、決して負担できない経費ではありません。

市民、保護者の願いは中学校給食の実施です。実現に向け、日本共産党議員団は引き続き全力で奮闘する決意です。

注:デリバリー方式:市町の定める基準を満たす民間業者が、自社の調理場で調理した給食を個別の弁当箱に詰め、各学校に配送する方式。学校給食として位置づけ、献立などは市が作成します。利用は一定の期間(1カ月単位など)を指定しての申し込みが必要。利用しない生徒は家庭弁当を持参しています。

兵庫県内の公立中学校での給食実施状況

設置者 学校数 完全給食 ミルク給食 未実施 備考
神戸 神戸市 85 * 2 83 75校で弁当販売、*印は夜間中学
阪神 尼崎市 20 ** 1 19 **印は夜間中学での補食給食
西宮市 20 20
芦屋市 3 3
伊丹市 8 8
宝塚市 12 12
川西市 7 7
三田市 8 8
猪名川町 3 3
丹波 篠山市 5 5
丹波市 7 7
播磨東 明石市 13 13 今年度予算に調査費
加古川市 12 1 11
高砂市 6 6
稲美町 2 2
播磨町 2 2 今年度中に実施予定
西脇市 4 4
三木市 8 8 '09年9月から
小野市 4 4
加西市 4 1 3
加東市 3 3
多可町 3 3
播磨西 姫路市 35 33 2 29校はデリバリー方式うち4校が休止中
市川町 3 3
福崎町 2 2
神河町 2 2
相生市 3 3
赤穂市 5 5
宍粟市 7 7
たつの市 5 3 2 デリバリー方式で実施
太子町 2 2
上郡町 1 1 小学校(7校)もミルク給食
佐用町 4 4
播磨高原広域事務組合 1 1
三土中学校事務組合 1 1
但馬 豊岡市 10 10
養父市 4 4
朝来市 4 4
香美町 4 4
新温泉町 2 2
淡路 洲本市 6 4 2
南あわじ市 6 6
淡路市 5 5
南あわじ市・洲本市小中学校組合 1 1
県立 2 2
合計 354 188 102 64

この表は、兵庫県県教育委員会の「学校給食の現況」(二〇〇八年五月一日現在)をもとに、編集部調べの最新の状況を反映させたものです。

(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

観感楽学


所在不明の高齢者が多数―という役所の実態が先月、日本各地で明らかにされました▼住民票があるのに実在が確認されていない百歳以上の高齢者がいちばん多かったのは兵庫県。神戸市兵庫区では六十四人ですが長田区ではゼロ。大震災の影響ばかりではないでしょう▼戸籍の調査も行なわれ、驚いたのは長崎県壱岐市でことし二百歳になる男性の生存扱い。江戸時代の文化七年(一八一〇年)生まれといえば「適塾」を開いた緒方洪庵や作曲家ショパンがいます▼関西では、百五歳から百八十九歳までの超高齢者が何と二十六人も各地で生きていることになっていました▼高齢者は死んでしまっても、政府や地方行政から冷たい扱いしか受けていない。まさに官僚主義の被害者です▼「官僚主義」とは何かと『広辞苑』を引いてみました―「官僚政治に伴う一種の傾向・態度・気風。専制・秘密・煩瑣・形式・画一などを特徴とする」とあります▼市民の側から見れば国政や地方行政がそうあってほしくないことすべてが官僚主義に該当します▼自分の足を使って市民サービスに努める職員を増員してください。(T)
(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

川西市議選10月10日告示・17日投票

すべての分野で市民の利益優先  願い実現へ奮闘する4議席必ず
―日本共産党が全力

住田由之輔氏
川西市議選は十月十日告示・十七日投票で行われます。定数は前回より四減の二十六。十数人の新人を含む四十人近くが立候補を予定し、多数激戦となる見込みです。










黒田みち氏
日本共産党からは、住田由之輔(63)、黒田みち(52)の現職二人と、北野のり子(47)、森本たけし(30)の新人二人を立て、現有四議席確保をめざします。










北野のり子氏
日本共産党川西市議団は、四常任委員会すべてに委員を送り、市政のすべての分野で住民の利益優先、住民要求実現へ大奮闘してきました。
その中で、三十人以下学級を求め国・県への意見書提出、障がい者医療費補助拡充・サービス利用料軽減、こども医療費の三歳未満児無料化、小学校での週五回の米飯完全給食、高齢者交通費助成の復活、高齢者入浴サービス中止の撤回―などを市民と力を合わせて実現してきました。





森本たけし氏
今回の市議選に向けては、▽中央北地区開発は凍結し、市民の納得と合意の下でまちづくりをすすめる▽福祉バス・福祉タクシーの運行▽市立川西病院の存続・拡充▽一般財源からの繰り入れを以前の水準に戻し、国民健康保険税の一万円引き下げ▽九億円の基金を活用し介護保険利用料引き下げと介護者支援に▽「公的保育を堅持し、財源確保・充実」を国に求めるとともに、川西市としても公私の幼稚園・保育園の十分な環境整備を行い安心・安全の子育てを▽中学卒業までの三十人以下学級と医療費無料化▽中学校完全給食の実施―など住民の願いを公約に掲げ、その前進・実現に大きな力を発揮する日本共産党の四議席を必ずと訴えています。


(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

高砂市議選 日本共産党小松・大塚両氏再選

小松みきえ氏
高砂市議選(定数二減の二十二に立候補二十六人)は九月五日、投開票が行われました。投票率は56・37%。

日本共産党の小松みきえ氏(65)=現=が十一位で、大塚よし子氏(55)=現=が十五位で当選し、現有二議席を確保。議席占有率は9・09%に前進しました。

日本共産党の得票合計は、三千三百二十七票(得票率7・85%)。前回市議選と比べると得票数は三百六十六票減ですが得票率は0・56ポイント増。今年七月の参院選比例票との比では得票数で一・五倍となっています。

大塚よし子氏
小松、大塚両氏は、国・県いいなりで住民犠牲の「行革」をすすめる議員ではなく、暮らしを守り、国保料一万円引き下げ、中学校給食実施、中学校卒業までの子ども医療費無料化など議案提案権の活用で市民の願いを実現する日本共産党の二議席をと訴えました。

(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

青年・学生連続講座

治安維持法下たたかった林直道氏の学問への思いに感動

日本共産党兵庫県委員会は九月一日、三回目となる「青年・学生夏休み連続講座」を開催。今回は、科学的社会主義の経済をテーマに、大阪市立大学名誉教授の林直道氏を迎えて講演と質疑応答を行いました。

林氏の八十七歳という高齢を感じさせない元気な講演は、ときおり笑いに包まれるなど、あっという間の三時間でした。講演の前半は「現代社会の貧困」、後半は「マルクスの剰余価値の理論」について。以前、東大生向けに講演した際に準備した論文をもとにしながら、現代の状況をふまえていまの富と貧困の対立の問題を詳しく紹介し、そのうえで資本主義社会の経済の仕組み、マルクスの剰余価値理論を分かりやすく講義しました。

質疑応答では、講義でも少しふれられた戦前、林氏が学生時代だったときの状況を詳しく話してほしいという要望がでました。

それにこたえ、林氏は、大阪商大事件で治安維持法違反を理由として逮捕・投獄された経験を語りました。

「経済学で人気のあった講師が、マルクス主義だということでクビになったことに反対して、運動をひろげるなかで仲間とともにつかまり、留置所に送られた。一緒に留置所でたたかった仲間は、精神を病み、亡くなってしまった。本当に優秀だった彼のことを、記録に残したいと思っている。私の戦後の経済学研究は、彼らが生きていればどうしたろうという思いでやってきた」と感慨深く語りました。


講座後、参加者が寄せた感想文には、「『価値は社会的平均で決まる』というのが印象に残りました。先生の個人的な歴史が心に残りました」「個人的には、大学時代の話が気になりましたね。すごい話でした」など、資本主義社会の仕組みや矛盾などの明快な解明とともに、林氏自身の生き方への注目・共感が綴られていました。

写真上:林直道名誉教授
写真下:講義を聴く学生たち
(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

兵庫革新懇が一泊研修ツアーで舞鶴ほか訪問

“憲法改悪への危惧感じた”

堤 隆二(兵庫革新懇)


結成三十周年を迎えた兵庫革新懇は八月二十九日、三十日の二日間、恒例の夏期一泊研修ツアーを行い、三十五人が京都府の舞鶴市と南丹市美山町を訪ねました。


舞鶴は、かつては帝国海軍の要塞・軍港でした。戦後、平和の港としての誓いをたてたものの、自衛隊の発足に基づき再び軍港の道を歩き始めました。

世界最強を誇るイージス艦をはじめとする軍艦がひしめき、まわりの半島や小島は弾薬庫となり、高い山にレーダーが立ち並び、完全に軍港として復活しているさまを陸と海から見聞した一行は、まさに聞きしに勝るその実態に息を呑みました。

また舞鶴には、戦争の傷跡を生々しく残す引揚記念館や、浮島丸事件の記念碑などがあり、戦争がもたらした惨禍と自衛隊の異様な存在との対比に、憲法が改悪されたらという危惧を強く抱かされました。

小浜で一泊し、翌日、一行は、奈良東大寺へお水取りの水を送る行事を行っている神宮寺を見学したあと、美山町を訪問。過疎の進む町での町おこしに取り組む行政や住民の話をきき、茅葺き屋根の集落を散策しました。

厳しい暑さの中でしたが「内容の濃いツアーだった」などの感想が寄せられています。


写真:偉容を誇示する舞鶴港の自衛艦隊
(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

一コマまんが




悪政に反省なく「さあ、妙手、妙手」

間 康成


(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

生活保護相談2千件超える

近畿生活保護支援法律家ネットワーク


近畿6府県の法律家たちが、病気や失業による生活困窮、多重債務、労働災害などの問題に、無償で相談に応じる、近畿生活保護支援法律家ネットワークの相談聴きとり件数が07年10月の相談開始以来、先月末で2千件を超えました。1日平均4件です。

同ネットワークの相談所は、神戸市中央区の神戸合同法律事務所内におかれ、泊満春さん(68)が専任相談員として対応しています。

現在登録している弁護士や司法書士は259人。相談者の居住地に応じて、近畿各地の弁護士と司法書士に相談内容を記した記録票を泊さんが、送ります。迅速な対応で報告書が送り返されてきます。

開始から約20カ月、かかってきた電話だけでも5千件を超えました。そのうち聴き取り票に書き込まれた相談は、女性1099、男性901とほぼ同数。年齢は22歳から95歳です。

現在、報告が届いている、生活保護受給開始など、解決した件数は424。府県別件数では大阪667、兵庫660、京都215、奈良118、滋賀94、和歌山92、その他155になっています。

生保受給に感謝の手紙

相談者から感謝の手紙が数多く届いています。「土木作業は雨が降れば収入ゼロ。役所へ相談に行っても『あなたは該当しない。働きなさい』と断られたが、近畿支援ネットの援助で生活保護受給が決まり救われました」(男性53歳・大阪)

「うつ病と統合失調症で入院している娘の看病で働けず、何度役所へ生保申請に行っても、たらい回しにされて5カ月。2人で死んだら楽とも考えていました。近畿ネットに電話し『生活保護を受けられるよ』の言葉に涙。地獄で仏でした」(母子家庭58歳・大阪)

「夫の会社が倒産し離婚。私名義の借金もあり、自己破産手続きをしました。5歳と3歳の幼児を抱え、不安がいっぱいでした。支援ネットの先生方に励まされ、生活保護を受けることができました。前を向き、子どもたちと一緒に歩んでいきます」(母子家庭33歳・宝塚)

泊さんは、厚労省が「65歳以下は就労を指導する」とし、生活保護申請の書類さえ渡さない「水際作戦」が、最近ようやく減ってきたと指摘。近畿支援ネットの運動が認知されたものと、全国からも注目されていると言います。しかし、不況は深刻です。倒産し借金を抱え、自殺寸前まで追いつめられた中小業者からの相談や、アスベスト患者の労災認定も激増していると指摘します。

近畿支援ネットに相談したSさん
「助けてもらいました」

神戸市垂水区のSさん(56)が、「8月31日付で生活保護支給決定通知が届きました」と9月3日、近畿支援ネットへ報告に訪れました。7月23日の受け付け以降、相談にのってきた今西雄介弁護士と泊さんが励ましの言葉をおくりました。

中堅企業の訪問販売担当だったSさんは、会社の規模縮小と業種変更から07年10月、解雇されました。雇用保険を受けながら、仕事を探しました。ハローワークに足を運んだ回数は100回以上。条件を下げても該当する職はなく、書類を送って面接までいっても、どれも不採用。預金が底を突き、生活保護を受けたいと役所へ行きましたが、窓口をたらい回しになりました。

どん底状態で知ったのが近畿支援ネットでした。「助けてもらって、ようやくスタートラインに立てました」と息をつきます。


今西弁護士は「その日の寝る場所、食べる物もない状態の人に対し、役所担当者はもっと誠意をもって対応すべき。申請さえ受け付けない対応に怒りを感じる」と語っています。

写真:生活保護支給決定の報告とお礼にネットワークを訪れたSさん(左)と相談にのってきた今西雄介弁護士(中)、泊満春相談員(右)=9月3日
(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

レッドパージ :生きている間に名誉回復を (1)

60年語らなかった私の体験
井之口久美子さん(85)西宮市

泉佐野で生まれ、西宮で育った私は、軍国少女で、従軍看護婦にあこがれていました。姫路で終戦をむかえ死から解放され、世の中が新鮮に見えました。

戦後すぐ、街角のポスターで見た「社会科学研究会」に興味をもち、会場の喫茶店を訪ねました。内海繁さんが中心になり大勢が、これからの日本について熱心に議論していました。

飛びかう専門用語がまったく判らないまま、私も仲間に加えてもらいました。

46年10月、共産党入党。西播地区委員会の半専従になりましたがもちろん無給。県委員会のオルグとして地区委員会に派遣されてきた井之口薫と知り合い48年8月、結婚。西宮に住みました。決まった収入はなく、自給自足の生活でした。

三菱電機伊丹製作所の社員募集を知り48年9月、入社しました。勤労課労務係に配属され、仕事は給料計算でした。

1年が経とうとしていた49年8月、昼食後職場に戻ってびっくりしました。いつの間にか配置転換され、私の机と椅子がなくなっていました。同僚たちは、窓辺に集まり小声で話し、私が声をかけても、目を合わせません。午前中いつも通り仕事をしていたのに。課長も係長も姿を消していました。誰に尋ねることもできず、頭が真っ白になりながら、退社時間まで立ちつくしてました。

私のタイムカードがなくなり「明日から出社しなくてよい」の文書がありました。その封筒に「受け取り拒否」と書いて課長の机の上に置き、煮えくりかえる思いで職場を出ました。翌日同じように出社しましたが、守衛にとり囲まれ、門の中に1歩も入れないまま、引きずり出されました。翌日は大門が閉められ、通用門から入ろうとすると警官と暴力団も加わり、とり囲みました。女性の人格を踏みにじる暴言の数かずを浴びせました。

その年初め、総選挙で共産党が4議席から35議席へ大躍進をしました。私への攻撃は、巻き起こるレッドパージへの一里塚だったのでしょう。

あれから60年余、触れることも、語ることもなかったレッドパージ体験への怒りを、兵庫訴訟の川崎義啓さん、安原清治郎さん、大橋豊さんの闘いが呼び覚ましてくれました。胸の奥から絞り出すような「生きている間に名誉回復を」の思いは、私も共通です。

生きている限り、3人の闘いを支援し、ついて行きます。

写真:「長い沈黙に火がついた思い」と話す井之口さん
(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

大日岳遭難事故裁判記録の出版報告会

息子の死を無駄にしない

大日岳遭難事故の裁判記録「息子たちの死を無駄にしないで」出版報告会が9月4日、神戸市勤労会館でひらかれました。

国民救援会兵庫県本部など、2遺族の国家賠償訴訟を支援してきた4団体代表が呼びかけ、約40人が参加しました。

10年前の3月、文部省(当時)主催冬山研修で、北アルプス大日岳に登山中の大学生が、引率講師の誤った判断から雪庇上で休憩、崩落事故にあい2人が死亡しました。

溝上国秀さん(神戸大学2年生)、内藤三恭司さん(東京都立大学2年生)の両遺族は事故調査委員会の「雪庇崩落は予見不可能」とする報告書に納得できず02年3月、真相究明と謝罪を求めて国を提訴。04年富山地裁で国の責任を認める勝利判決。名古屋高裁金沢支部で07年7月、和解が成立しました。

裁判記録をまとめた国秀さんの両親、不二男さん(65)と洋子さん(55)は「国は、雪庇が原因とする判断を正さないまま冬山研修を再開。正式な謝罪もまだない」と述べました。

参加者からは「原因究明は再発防止に不可欠。国に報告書修正を要求しつづけよう」の声が出されました。

写真:いまの思いを語る溝上さん夫妻
(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

劇団どろ朗読劇「遠くの戦争」9月18日・19日

戦争・貧困を告発


劇団どろ(合田幸平代表)が、篠原久美子作の朗読劇「遠くの戦争―日本のお母さんへ」を今月18日、19日、劇団稽古場で上演します。

渡辺えりさんら「非戦を選ぶ演劇人の会」が昨年8月に初演。共鳴する人が誰でもとりくめるよう、台本は無償公開されています。

物語は、パレスチナ難民の少年アブドゥール、彼を里親として経済援助している日本人女性、派遣切りで職を失った彼女の息子の会話を柱に、パレスチナ、日本、アメリカ、それぞれの「戦争」が、数多くのレポートから浮かび上がります。辺見庸や堤未果、湯浅誠、雨宮処凜らのルポが随所に折り込まれています。年間3万人が自殺する日本の貧困・格差社会問題を「内面の戦争」と告発します。

「戦争は遠くの問題ではない。貧困と戦争は深い関係がある。戦争犠牲者の多くが子どもたち」と演出の合田さんは語ります。

写真:「遠くの戦争」の稽古を重ねる出演者たち

(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)

田渕茂美歌集『一日を紡ぐ』


「余命十年告げられてより三十二年一日は宝と生きつぎて来し」

姫路在住の歌人、田渕茂美さん(70)が10年ぶりに歌集「一日を紡ぐ」を出版しました。「生きる」「命塚」に次ぐ3冊目です。418首が収録されています。

筋萎縮症のため、車椅子生活を余儀なくされていますが、自ら車を運転し、県内はもとより、北海道から沖縄まで何度も足を運び、社会革新、平和運動などを詠んできました。

どの歌にも、1日1日を真剣に生きる姿勢がうかがえます。

新日本歌人協会刊行委員会発行、四六版、184ページ、2千円。TEL079・253・5534(田渕)

写真:「表紙は大好きな紫にしました」と言う田渕さん
(2010年9月12日付「兵庫民報」掲載)