三菱重工㈱は七月二十一日に「新造商船の建造を三事業所から二事業所体制に集約」し「百年以上の伝統を持つ神船での商船建造を二年後に終了する」と発表しました。
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まさに「目先の利益第一の横暴」であり、三菱重工㈱が大企業にふさわしい社会的責任―雇用、中小企業、環境、地域社会などへの責任を果たし、応分の社会的負担を担うことを放棄することです。
現在、商船建造部門で働く労働者は三百二十八名ですが、神戸の潜水艦部門へ百七名、原子力部門へ百名、東京本社や長崎造船所への転勤が十五名、神戸地区内休職派遣が六十五名、二年間の定年退職者が四十一名との再配置計画が明らかになりました。
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しかし、影響はこれにとどまりません。
下請けなど含め千数百人に波及か
造船は裾野の広い産業です。現在、神戸造船所の商船分野にかかわる会社は百五十社と言われています。構内での一次下請けだけでも四十一社で、その内商船関連のみの取り引きは七社、他の三十四社は商船・潜水艦両方の取り引きを行っています。これらの人員規模は商船が約七百名、潜水艦が二百四十名です。また二次、三次下請けを含めると、下請け関連社員の人数は千数百人を越える可能性があります。
ところが三菱重工㈱会社は、説明する範囲を一次取り引きのみに限定。しかも「個別に各社と話し合いさせていただき、神船内の他部門あるいは他の造船関連事業所や近隣の事業所等との取り引きを希望されるパートナーがあれば、関係先に紹介する」という対応にとどまっています。
下請け経営者の中から「われわれ二次業者には何の説明もありません」「下請け業者の仲間内ではみな沈黙した状況」「まず社員の配置が決まってからの話で、私たちは不安な気持ちで待たざるをえない」「『商船建造があと二年分で次の仕事が出せない、数十名は今から次の仕事を見つけるか、どうするか考えておくように』と言い渡されている」「今仕事に追われて、てんてこまいしているのにそんなことを言われても困ってしまう」と繁忙な仕事に追われ「将来の不安」を抱えた状況におかれています。
また一次業者で働く労働者は「子どもが高校生でこれから教育費もかかってくるし、こんな時期に長崎か下関へ行けるわけがない、どうなるのか不安だ」。関連会社の管理職は「火力部門から撤退した時は人ごとだったが自分がその立場に置かれ『そんな!』というのが率直な気持ちです」と語っています。
労働者・地域などの声聞き、再検討を
三菱重工㈱は労働者・取り引き関連企業とそこで働く労働者や、地域商店街・地域住民の声を聞き、提案を再検討すべきです。
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写真:海上から見る三菱重工㈱神戸造船所=神戸市兵庫区
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(「兵庫民報」2010年8月22日付掲載)