勾留理由開示公判で捜査の不当性明らかに
神戸市西区で、参議院選挙での街頭宣伝の際、選挙運動用ポスターを信号柱などに仮止めしたことが公職選挙法違反だとして、日本共産党後援会員の男性が神戸西警察署に逮捕・七月九日以来勾留されている「神戸市西区ポスター公選法弾圧事件」。その勾留理由開示公判が七月二十六日、神戸地裁で開かれました。
勾留理由開示公判とは、勾留を決定した裁判官に対して、弁護人と請求人が公開の法廷で勾留を決定した理由の釈明を求める裁判。捜査の不当性を追及し、即時釈放を求めるものです。
勾留理由開示公判が開かれることは多くなく、法廷も神戸地裁では広い一〇一大法廷の約百席に対して二百人以上が傍聴に駆けつけるなど、異例の公判となり、担当裁判官のみならず、神戸地裁全体に、この事件に対する市民の広く強い関心を印象づけました。
また、勾留されている男性が入廷すると、割れんばかりの拍手が起こるなど、これまで直接会えなかった妻や支援者の姿が男性を大いに励ましました。
勾留理由の不当性を追及
公判で裁判官は、勾留理由として「罪証隠滅や逃亡のおそれがある」と説明。
一方、男性は「私は信念をもって政治活動をしてきました。そして不当な政治弾圧に抗議する意味で黙秘してきた。選挙の公正を犯すようなことは何一つしていません。早期に釈放されることを申し述べます」と堂々と陳述しました。
男性の妻も開示公判の請求者として陳述。「やさしい夫です。二人で寄り添って生きてきました。逃亡して何の得があるのでしょう」と釈放を求め、訴えました。
弁護団は、裁判官に対し、全国各地で行われている同様の行為は何ら取り締まられておらず、さらに、今回の男性の場合は短時間に過ぎず、仮にポスターなどの仮止めが違法だとしても身体的勾留までする理由はないと主張。警察官が警告もせずいきなり逮捕したこともあげ、「特定の政党や特定の思想を持つ者の活動を狙い撃ちにしたものと強く推測される」と指摘するなど、勾留理由がなりたたないことを明らかにしました。
支援の声が広がる
男性を支援する同事件対策委員会は、逮捕以来連日、神戸西警察署への抗議、同署に勾留されている男性への激励の行動を行い、無所属市議など党派を超えた人々が参加しています。また、神戸地検には千を超える(七月二十六日現在)不起訴要請の団体署名が提出されています。
ポスター仮止めは代替のない表現方法
日本国民救援会兵庫県本部は二十六日、神戸地方裁判所に「検察官の不当な強制捜査をやめさせ、これ以上の安易な令状発布を行わないことを求める要請書」を提出。その中で、ポスター仮止めは代替手段のない表現方法だと主張しています。
現行公選法では選挙運動での拡声器使用は厳しく制限され、市民は肉声で宣伝するほかなく、そのため遠くからでも何党の宣伝か分かるよう、宣伝の間だけ、補助的に選挙運動用ポスターなどを掲げるという工夫をしています。その際、倒れたり風で飛ばされたりして交通の障害などにならないよう仮止めをするのが選挙運動の常識となっていると指摘し、ポスター仮止めは、公選法の厳しい言論規制のもとで工夫された代替手段のない表現方法だと主張し、逮捕の不当性を告発しています。
(「兵庫民報」2010年8月1日付掲載)